徳島文理大学

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徳島文理大学短期大学部

【科目名】    児童文学B

科目番号00084担当教員名上田 穂積単位2単位
科目群専門必修・選択選択開講期後期 対象年次4年
授業概要
(授業目的・方針 等)
文学と文化の交差点としての「児童文学」の〈場〉を考える。児童文学Aに引き続き、日本の児童文学の流れを押さえながら、〈子ども〉とは何か。〈子ども〉を描くとはどういうことかを考える機会にしたい。学生には講義を通して、社会における子どもの問題を考えて欲しい。そして、その成果を期末のレポートもしくは創作童話の完成によって示してもらいたい。
到達目標
授業計画授業形態授業時間外学習
【1】昭和期の児童文学(1)ー宮澤賢治の登場:宮澤賢治の第一童話集『注文の多い料理店』を精読する。  
【2】昭和期(戦前)の児童文学(2)ー宮澤賢治の位置:前回に引き続いて『注文の多い料理店』を精読する。  
【3】昭和期(戦前)の児童文学(3)ー少年読み物の世界:この時期に隆盛を誇った「少年倶楽部」を中心にして、少年の読み物として「児童文学」の在り方を探る。佐藤紅緑・山中峯太郎・江戸川乱歩・吉川英治らのテクストを検証する。  
【4】昭和期(戦前)の児童文学(4)ー児童文学としての〈漫画〉:漫画自体を児童文学として考えて良いかどうかはまだ議論の分かれるところである。しかし、〈漫画〉がひとつの〈教養〉の在り方として大きな市民権を得ている今日の現実を考えると、その源流について考察しておかないわけにはいかない。今回は、当時の少年たちを惹き付けてやまなかった「冒険ダン吉」や田川水泡の「のらくろ」を素材にして考察する。  
【5】昭和期(戦前)の児童文学(5)ー新美南吉の登場:生前は不遇だったこの書き手の存在こそ、宮澤賢治と並んで、日本児童文学の確立に大いに寄与したといえる。〈子ども〉たちは、ある意味で、自分たちの書き手を得たと言ってもよい。今回は、彼の代表作のひとつである「ごんぎつね」を取り上げる。  
【6】昭和期(戦中)の児童文学(6)ー抵抗のかたち:前回に引き続いて新美南吉のテクストを精読する。今回は、「おじいさんのランプ」である。ここには日本近代を生きた無名の人間の生き方が見事に示されている。それは泥沼のような戦争を続行している現実とどう関わっていくのか、考察する。  
【7】戦後の児童文学(1)ー壺井栄と竹山道夫:戦後の児童文学界の荒廃からの復活には、このふたりの活躍が不可欠であった。「ビルマの竪琴」と「二十四の瞳」の〈非戦・反戦〉とは何かを考える。  
【8】戦後の児童文学(2)ー石井桃子と松谷みよ子:戦後の児童文学の大きな特徴として、〈女性〉の活躍がある。戦後の言論空間を鮮やかに印象付けたこのふたりのテクストを読む。石井桃子の「ノンちゃん雲に乗る」と松谷みよ子の「貝になった子供の話」を取り上げる。  
【9】現代日本児童文学(1)ー過去の総決算:昭和35年(1960)を境に日本の児童文学は大きく転換することは良く指摘(宮川健郎)されている。つまり、この時期をひとつの区切りとして、過去の遺産に対する再評価のタブーが取り払われたと言ってもよい。宮澤賢治や新美南吉が評価されるようになったのもこの時期以降になる。その大きなきっかけを作ったのが「子どもと文学」という書物である。今回は、その内容を紹介しながら、現代児童文学に移行する意味や問題点、そしてそこに示された展望等について講義する。  
【10】現代日本児童文学(2)ーさとうさとる・寺村輝男・いぬいとみこの世界:戦後を代表する3人の代表作を精読する。  
【11】現代日本児童文学(3)ー60年代の諸相:急速に発展する経済的成長とそれに伴って加熱した教育問題は、子どもの読み物の世界に多大な関心を呼ぶことになり、多くの書き手の輩出と大量の〈読者〉の獲得をもたらすことになった。また、それは当時の皇太子の成婚というビッグ・イベントと相まって加速の度を深めたといえる。今回は中川李枝子の「いやいやえん」、「ぐりとぐら」を中心に、あまんきみこや今江祥智の作品を取り上げる。  
【12】現代日本児童文学(4)ー70年代の諸相:安房直子・今江祥智・灰谷健次郎の活躍が目を惹くこの時期は、ある意味で安定した価値観によって児童文学が書かれ、出版され、読まれてきたといえる。しかし、その反面、平穏な時期もやがて終焉を迎えようとしていた。そうした反応ひとつは、いち早くTVドラマとして表現されることになる。80年に空前のヒット作となる「三年B組金八先生」がそれである。経済的発展による現代社会のある豊かさの実現は、いつの間にか〈個人〉の在り方やその方向性に多様化をもたらし、みんなが抱くような大きな目標を喪失させ、漂流するような現実を招いた。もっとも、それは功罪相半ばする問題だが、確実に個人の価値観が変わることで、社会や家庭、家族の関係に変化を与えた。つまり、戦後培われてきた子ども観にしたがって児童文学を書くことの限界性が露呈されることになったのだ。新しい児童文学とは何か、その模索が始まった時代ともいえる。その時期の作品を検討する。  
【13】児童文学の現在(1)ー宮崎駿の世界:児童文学と映像の関係を考える。今回は宮崎アニメを中心にその功罪を論ずる。また、ポケ・モンやハリ・ポタ現象も視野入れて講義してみたい。  
【14】児童文学の現在(2)ー灰谷健次郎の世界:良くも悪くも現代でもっとも優秀な書き手である灰谷のテクストについて考察する。  
【15】児童文学の現在(3)ー現代作家と絵本:最近は村上春樹、江國香織など現代を代表する書き手が絵本を出すことが稀ではない。それは何故なのか。現代文学と児童文学のコラボレートの問題を考察する。  
評価方法
出席と期末レポートもしくは創作童話の提出により総合的に評価する。
教科書
前期に引き続き、大藤幹夫編著『展望 日本の児童文学』(双文社出版 1800円)
を使用する。
参考図書
随時、プリントを配布する。
備考